時空の彼方から ―古の家刀自編― 一ノ章

6章



「時雨もともに参るか」
 この時代……飛鳥朝の正装に等しい袍を、厩戸に着せていた時雨の手は一瞬止まった。
「幸玉宮はここから目と鼻の先だ。時雨は……外に出たことがないだろう? 皇子が案内しよう」
 現在の訳語田大王の宮にして、政治に中心たる「訳語田幸玉宮」
 数日前に訪れた使者がもたらした一つの招待状は、本日池辺宮一家はそろって幸玉宮の宴に参るようにとの大后「額田部女王」からの誘いだった。
 池辺宮の主たる豊日大兄皇子は、額田部にとっては実弟。幼きときから仲のよろしい姉弟であったらしく、何かあるたびに女王は実弟と叔父たる蘇我馬子を頼るのだという。
 幸玉宮への呼び出しも、普段は豊日だけであるのだが、今回は一家そろってということになった。
 厩戸は何かあるのではないかと勘ぐっているようだが、久しぶりの遠出に少しばかり浮かれて見えるのが……時雨にも分かった。
「いいえ……宮廷など参りますと、きっと時雨は足が竦んでしまいます」
「…………」
「皇子?」
 袍を六歳の子どもとは思えぬ優雅さで着こなす厩戸を見ていると、時雨は誇らしさと同時に胸に迫る痛みを感じる。
 自分が六歳の時はどうであっただろうか。
 今の厩戸以上に醒めた目をして、世に何一つ求めず、感じず。ただ一つ望んだことは「終わり」だけ。子どもの時から一日一日が過ぎ去るだけの日日。空の色が変わり行くそれだけが……時を自分に知らせる。
「やはり時雨も一緒にいこう。皇子は時雨がいなければ何一つ楽しみがない」
 袖を引っ張るその手が、妙に頼りなくて、思わず時雨はそっと自分の手をあてた。
 揺らぐ烏色の瞳の中に、寂しげな色合いが見え隠れする。
 時雨は厩戸の手をそっと握り締めて、
「一緒に参ります」
「そうか。時雨が時渡り人たることは悟られぬようにすれば……父君も煩くいわぬはず」
 ……時渡り人たるゆえに、池辺より出れぬなど……おかしいのだ。
「皇子。私は外出を禁じられているわけでありませんよ」
「同様ではないか。父君は……時雨の存在を秘すために……ここから出そうとはしない」
 幸玉宮の大王家に「時渡り人」たる時雨のことを、豊日はことさらに秘すことを決めた。それは「王朝の危機」の際に現れる時渡り人の存在の価値が意味をなしている。今が「王朝の危機」と人々に悟られることは、体調面が優れない訳語田大王にも決してよきことになるまいという判断だ。
「皇子」
 胸元にそっと顔を埋め、厩戸はわずかに震える。
「すまない……。時雨はここにいても何一つ良きことがない」
「なにを言われます。時雨はとてもよきことばかりでございます」
 こうして厩戸の側にあることができる。こうして……何一つ躊躇いもなく輝かしき「聖王君」が自分に触れてくれるそれだけで、
 時雨は訳もなく涙が流れてくるほどに、うれしい。
「……皇子」
「時雨はここで生きていくのだ。外を見て欲しい。我が飛鳥はとても美しい。好きになって……ほしい。帰りたくなくなるほどに」
「皇子。時雨には帰る場所などありませぬ。皇子の側に……置いてください」
「時雨」
 六歳の子どものまだ頼りない小さな両腕が、時雨の体をギュッと抱きしめる。
「時雨は……厩戸のものだ。永遠に」
 どこにもいくな。ここにいて……ずっと厩戸と生きていく。それだけでいい。
 触れ合うことで伝わる人と人の温度が、いかに温かいか時雨はこの十八の年まで知らずにいた。
「時雨は聖王君のためだけに……あります」
 時雨の胸の中でだけ、小さく震え甘える厩戸が愛しくて、悲しくて、苦しい。
 なによりも時折厩戸の目に滲む無の感情が居たたまれなく、時雨はこの手を握って離したくはなくなる。
「ずっと時雨は皇子の側にあります」
「……うん」
 顔をあげて、厩戸は笑った。


 輿で訳語田幸玉宮に入った池辺宮一家は、大后額田部女王自らの出迎えを受けた。
「まぁ厩戸。大きくなりまして。ますます手白香の祖母に似てきますね」
 時雨の袖をギュッと握っていた厩戸であったが、スッと一歩進み出ると叔母たる大后に向かって優雅に一礼を見せた。
「そう……その仕草。いつも祖母もそうして……いつも毅然とありました」
 万座の前で額田部は厩戸をギュッと抱きしめ、そしてその腕に高々と抱き上げた。
「重くなりましたね」
「大后。人目があります」
「なにを言いまして。伯母が可愛い甥を抱き上げてなにがいけませんの」
 額田部の腕の中で耳まで真赤にしている厩戸の顔を、なぜかホッとする思いで時雨は見つめていた。
 六歳とは思えぬほど老成し、優雅にして毅然たる厩戸を、きちんと六歳の子どもとして扱っている人もいる。
 実の両親すら厩戸を「仏より授かった皇子」として一歩引いた節度ある接し方を見せることが、時雨は哀しかった。
(額田部女王。訳語田大王の皇后たる炊屋姫……後の推古女帝)
 厩戸より数歩下がった場所で跪拝の礼を取りながら、時雨は額田部をそっと覗っていた。
 誰もが手白香皇后の血をいちばんに受け継いだのではないかと称するほどに毅然とあり艶やかな才媛と……また女傑と称えるので、時雨は歴史に名高き「女帝」を、まさに王者の質をもった艶やかな貴婦人と想像していた。
 確かにその黒き瞳よりは滲み出すほどに理知的な色合いがあり、佇まい凛とあり、また毅然。容姿からして艶やかな肉体美誇る女性なれど……今、厩戸に見せる表情はどことなく無邪気で可憐だ。
 そこが違和感ともなり不均衡なのだが、目が離せぬ魅力をかもし出す。
 今、時雨は上宮王こと斑鳩王の姿と、その御身が仕えしただ一人の古の女王をこの目で見ている。感動とは少し違う。……何か時空の彼方に迷い込んだそんな異邦人の気分だ。
(私は……)
 やはりこの地の「人間」には自分はなれていない。どれだけの人が受け入れてくれようとも、自分は此処では「異邦人」
 生まれ育った場所では、何一つ居場所を得られなかったのに。この地で「居場所」を得ようとも、心はどこまでも「異邦人」と一線を引く。
 どこにも安穏の地はないのだろうか。生涯どこにいようとも自分の心は……何重にも線が引かれる。
(皇子……私の聖王君)
 時雨は今、叫びたかった。
 額田部の腕の中にある厩戸に触れたかった。ただこの腕の中で抱きしめたかった。
 よく理解した。認識もした。時雨はただ厩戸を抱きとめている時だけ「安らぎ」を得る。厩戸が与えてくれている。
「大后。厩戸は、子ども扱いは好みませぬ」
「六歳の子がそのような口を聞くでありませんよ。可愛い厩戸よ。無理をして大人になることはないのです」
 額田部はトンと地に厩戸を下ろすと、途端に厩戸は時雨の傍らに並び、その袖を握り締めた。
「おや、見慣れぬ顔ですね。厩戸に守り役でもつけたの? 豊日」
「姉君。こちらは時雨といい、ゆえあって我が宮に引き取ることになりました者です」
 額田部の黒き瞳がジッと時雨を見る。それはまるで値踏みするかのような視線で、一瞬だけ体中にゾッと悪寒が走った。
 わずか後には柔らかなやさしい目をする額田部に、時雨は足がわずかに震えていることを感じる。
(これは……蘇我の血。濃い……蘇我の血だ)
 時雨の体内の血が逆流する。
 受け入れがたいと頭の中に血がのぼり、同時に額田部の中にある「大王家」の血が時雨に安心感を抱かせた。
「お初にお目にかかります。私は……上宮時雨と申します」
 以後、お見知りおきを、と時雨としては精一杯、落ち着いて拝を取ったが、目の前に歩を進めた額田部は時雨の手を取り、
「あなたのように可愛らしいお方は大好きですよ。今日はゆっくりとしていってくださいね。上宮時雨……時雨ですね」
 にこりと微笑んだ額田部の手は、驚くほどに冷たかった。
 目と目が合う。目をそらすことは許さぬという迫力に満ちた力は、時雨の身をも震え上がらせるほどに恐怖を抱かせた。
 同時に、だ。よくよく見るとその暗き瞳には日の光の加減により茶褐色が滲むのを捕らえる。
(この方は……蘇我の血が濃すぎる)
 時雨の血を逆流させるほどに……あの蘇我の嫡子たる毛人を凌ぐのではないかと思わせるほどに。
 後の推古女帝はあろうことか……蘇我の申し子だ。
「わ……私ごとしに尊きお手で触れられては……なりませぬ」
 ようやく言葉をわずかに震わしながら、時雨は声にしたが、
 額田部はなにを思ってか、その両腕で時雨の体を抱きとめ、耳もとに唇をあてる。
 ふぅ~と一息耳に注がれた息に、時雨は妙に気が抜けた。
「かわいらしい。ようこそ、時空の時渡り人」
「えっ?」
 今……時空の時渡り人と聞こえた?
 パッといささか無礼にあたるかもしれないほど強引に離れた時雨を、やさしい目で額田部は見つめている。
「豊日。私、この時雨がとても気に入りました。この幸玉宮に置いて参りません?」
「姉君。この時雨は……」
「厩戸の時雨だ」
 いまだに震える時雨の手を、今度はギュッと小さな厩戸の手が握り締めた。
 なぜだろう。やはり不思議でならない。この厩戸の中にも蘇我の血は確かに流れているのに、完全に何かの然様で血と血が中和され、時雨はその血に反応することはない。
 なによりも愛しい。厩戸に触れるたびに、この身が湧き上がる喜びはどう言葉にしたらよいか分からぬほどに……時雨に感情を呼び起こす。
「そう、厩戸がそれほどにお気に入りなら無理はいえませんね。残念です。こんなに可愛らしいお方なのに」
「姉君。その可愛らしいものを愛でる性格を少しばかりお直しせねば……大王が頭を抱えておりますよ」
「豊日、それは昔からのこの私の性格。今更ではなくて。あら……こちらにも可愛らしい坊やが。穴穂部もお久しぶりデスね」
 額田部の関心は輿よりゆっくりと降り立った穴穂部と、その腕の中にある来目に移ったようだ。
「……気にするな、時雨。大后はあぁだ。人にすぐに惚れこみ、一瞬にして醒める」
「……皇子」
「人は手白香皇后の再来などというが、あの女は姿勢と口を開かねば毅然とある女傑だが、性格はあの通りだ。可愛いものに目がない」
 右腕にギュッとしがみついてきた厩戸の目は、穴穂部の腕の中にある来目に注がれている。
「大后が女傑と言うならば、我が母の方は風体はたおやかだが……まだ女傑と思えるほどだ」
 時雨も額田部を視線で追うと、
「まぁ可愛らしい。来目皇子。私の末の姫の婿になります?」
 どうやら娘の婿候補に決めたようだ。来目をその腕に抱き「未来の婿殿」と呼び始めた。


 幸玉宮での宴は歌舞音曲を拝した盛大なものであった。
 厩戸は楽師の笛をジッと見ていた。どうやら笛に興味を持ったようで、ふと立ち上がり、楽師に近寄り笛を貸してもらっている。
「時雨、時雨。皇子もこの笛を吹ける」
 その顔に子どもらしい無邪気さを込めて、厩戸は笛を操る。
 わずかの間で音階を覚え、簡単な曲を奏ではじめた厩戸を楽師たちは驚愕の目で見つめていた。
 未だ六歳。天才というものを微塵も疑うこともなく知らしめられるただ一人の聖王君。
「時雨のために吹こう。時雨が哀しいときに皇子が曲をもって慰める」
 時雨、と名を呼ばれる。厩戸が「時雨」と呼ぶときは、いつも「やさしさ」が込められていた。
 笛に夢中になっている厩戸を残し、時雨は豊日に断って席をたった。
『滅多にないことだから、幸玉宮を見学しておいで。あまり……先にもいったが内部には入り込んではいけないが、庭あたりなら好きにするといいよ』
 豊日は快く頷いてくれた。
 今朝までは感じられなかった「蘇我の血」に対する恐怖。
 額田部の蘇我の血の濃さが、同じ血を引く弟妹たる穴穂部と豊日の中に眠る蘇我の血を表に出させる。
 普段ならば気にもならないというのに、今はこの血がこの身を「傷める」のだ。ましてや……先ほど同じく宴に招待されていたらしい大臣蘇我馬子の登場とともに、蘇我の血にも匂いにも時雨は吐き気と頭痛眩暈まで引き起こした。
『皇子、我が皇子。この爺に抱かせてくだされや』
 と、まず馬子は厩戸をその腕に抱き上げる。どうやらこの人も額田部同様に厩戸を子ども扱いができる一人のようだ。
『大臣……爺、厩戸は子供ではない』
 と、長く伸ばされた馬子の髭を引っ張る厩戸の瞳は、和やかだった。
 蘇我嫡流の当主にして、現在朝廷において「大臣」として三蔵を預かる財政の要たる蘇我馬子。
 大連にして、八百物部と言われるほどに同族士族が多く軍事専門の「物部一族」と対を張るただ一人の男。
『女王。皇子はこの馬子が婿としてもらうぞ』
 かわいい可愛い、と厩戸の頬に口付ける馬子を、ピシャリと厩戸はその頬を叩いた。
『なにをいいますの、叔父君。厩戸はわが一姫の婿と決めておりますのよ』
 今度は額田部が厩戸を強引に腕の中に抱きとめる。
『馬子の一姫の刀自子の方が美人じゃわい』
『まぁ……叔父君とて許せぬ発言。私の一姫菟道貝鮎は……この宮一の美女ですことよ』
『皇子よ、一姫は皇子よりも年上。刀自子の方がお似合いじゃ』
『この髭面の年をとった振りをする叔父君よ。厩戸は私が最初に目をつけましたのよ』
 厩戸はやれやれという顔をしている。慣れた素振りだ。
 飽きもせず厩戸をはさんで取り合いに似た争いを繰り広げている。豊日は頭を抱え、穴穂部はふと寂しげにふと嬉しげに厩戸を見つめていた。
 一番困った顔をしているのは当の厩戸だ。
『厩戸は刀自子も菟道貝鮎も好かぬ。厩戸の妃はもう決めておる。時雨』
 と、手を伸ばされ、時雨はその場で固まったものだ。
 馬子と額田部双方の視線を浴びるだけで、息が詰まる。
『ほう……時雨。上宮時雨か。我が息子から聞いているよ』
 わずかに嫌悪感が込められた言葉に、時雨は型どおりの挨拶を返すのがやっとだった。
 値踏みするその人を人とも思わぬ視線は……恐怖とともに血が叫ぶ「受け入れてはならぬ」と。
 ここにはいられない。
 双方から解放された厩戸が、笛に夢中になっているのを幸いに時雨は宴を抜けた。
 ようやく外に出た。やはり宮廷の庭である。すべてに手入れが行き届き、整然とした木々の配置は均衡が取れており、人工的なものを感じられた。
 人がひっきりなしに走り回る。裳をヒラヒラと揺らせながら走る采女の嬉々とした顔。剣を構える舎人は仏頂面で、真っ直ぐ前を見ている。時折呼び止められ、素性を型どおり言われているままに綴るのが時雨には気が重かった。
 顔をあげわずかに紅葉色が見える葉を見ながら、あてもなく時雨は歩いた。息苦しさは一瞬にして消えている。眩暈もしない。あの血が逆流する感触は……静まった。
 桜の大木に寄りかかり、時雨は大きく深呼吸する。
「私は……上宮の人間なのですね」
 蘇我の血を決して受け入れず、この身が血が叫ぶのだ。その血は相容れぬ。その血は異端だ、と。
 時雨はその身を抱きとめ「聖王君」と名を呼びながら、なぜ、と心の中で叫んだ。
 この飛鳥の地ではこの自分こそは「異端」であり、「異邦人」であろうに。なのにこの血はどうしてこうまで「蘇我」の血を敵視するのか。
 上宮という閉鎖された一族の中に脈々と受け継がれてきた感情や、歴史が、どこまでも時雨を苦しめる。
「そこのお方。なにをされていますか。ここは奥。そこより先は後宮ですよ」
 目の前に立つ采女がいささか困った顔をして時雨を見ている。
 後宮……。幸玉宮のここからは「奥」 訳語田大王の妃や幼い皇子皇女が住まう宮。
 男子の出入りは当然のこと厳重に取り締まられている。
 豊日に「後宮にだけは足を踏みこまぬように」と言いつけられていた。
「申し訳ありません。此処から先は決して足を踏み入れませんので」
 会釈程度に頭を下げた時雨に、
「よろしいのですよ」
 聞き知った声が聞こえてきた。
「その人はよろしいのですよ。男装の女性ですから」
 にこにこと笑ったその少年は、今日は烏帽子束帯ではなく美しき黒髪を美豆羅結いでまとめ、それが風にのってわずかに揺れる。
 男装の女性?
 時雨は自分に人差し指を向けると、少年はにこりと上品気に笑った。
「あの……私は」
「これは麻呂古皇子さま」
 采女は一礼しそそくさと去っていった。
 麻呂古皇子? その名は時雨の知識の中にはない。この後宮にあるならば訳語田大王の皇子の一人だろうか。
「ようこそ、時雨。こちらにおいでなさい。表ほどではないですが、身内のもので賑やかにしています。あなたにあわせたい人もありますから」
「私などが……それよりあなたは」
「お知りになりたいならば一緒においでください」
 さぁ、と手を引くこの少年は、あの最期の残暑の風が吹いたときに不意に現れた少年だ。時雨が持つ「聖鏡」と八咫鏡が似ていると教えてくれた……あの少年。
 もう一度会いたかった。会って問いたかった最初の言葉、
「あなたは何者ですか」
 少年はやさしく笑う。
「この宮のただ一人の語り部ですよ」
 つながれた手は、とても温かい。
 少年の周りを包む清涼な風と、柔らかな物腰。誰が見ても「育ちが良い」上品な皇子さまは、風情とあった品よく整った顔をしている。それは人の警戒感を見事なまでに解く。
「時雨」
 そして厩戸とは異なったその名を呼ぶ「柔らかさ」に、時雨はホッとするのだ。
 この人は敵ではない。
 その身から蘇我の血は感じられず、その身は……親しみと柔らかさをもって時雨に接する。
 はじめて会ったあの時から、警戒を抱くこともなく、ただもう一度会いたい、と願った。
「……あなたは誰ですか」
 我知れずに再び問うていた。
 尋ねねばならない、と思った。
 二度の問いには答えはなく、時雨は手を引かれるままに後宮に足を踏み入れていく。
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時空の彼方から 古の家刀自編一ノ章 6章

古の家刀自編一ノ章 6章

  • 【初出】 2007年11月26日
  • 【改訂版】 2013年1月22日(火)
  • 【備考】 横書きパージョン
  • 登場人物紹介